知財最前線は今 【The DailyNNA】
 
File no.102 モバイルゲームの知的財産(日本貿易振興機構(ジェトロ)ソウル事務所 副所長 笹野秀生(特許庁出向者))  2017-04-05
 2017年(平成29 年2月8(水) The Daily NNA【韓国版】掲載



File no.102 モバイルゲームの知的財産

 昨年日米をはじめ世界中でヒットしたゲーム「Pokémon GO」が、今年1月に韓国においてもリリースされ、大きな話題になりました。韓国はスマホで行うゲームが盛んなだけに、ゲームにまつわる知財問題もしばしば発生します。本稿ではゲームの知的財産保護について実例と共に紹介します。
 
ゲームの知的財産とは?
 
 まず、ゲームを構成する要素を考えてみます。例えば、上記「Pokémon GO」の場合は(1)「Pokémon GO」というゲームタイトル、(2)ポケットモンスター(ポケモン)のキャラクター、(3)ポケモンを捕まえるモンスターボール等のアイテム、(4)ゲームの画面デザイン、(5)各種ポケモンを捕まえてポケモン図鑑を完成させるといったストーリー、(6)ポイントを稼いでレベルを上げると強いポケモンに遭遇できるといったゲーム規則、(7)ゲームのコンピュータプログラムが挙げられます。
 
 これらの要素は、ゲームの種類等によりケースバイケースで異なりますが、代表的には以下のような法律での保護が可能と考えられます。


  
 以下では、ゲームの知的財産保護の実例を見てみましょう。
 
ゲームタイトルの保護はどこまで及ぶか?
 
 原告は「カカオトーク」を基盤とするモバイルゲーム「ANIPANG(エニパン)」を発表し、爆発的な人気を博しましたが、被告は原告が当該ゲームを発表した2カ月後に先使用商標ときわめて類似の商標を「電気音響機器、音盤、紙製タオル、ちり紙」などに出願して登録を受けたため、原告は商標法を根拠に無効審判を請求しました。しかし、特許審判院では登録商標は有効とされたので、原告はそれを不服として特許法院に出訴したという経緯です。


 
 被告の登録商標は「電気音響機器、音盤、紙製タオル、ちり紙」などを指定商品としていて、原告の先使用商標(モバイルゲームに使用)と用途が異なるのですが、ゲームキャラクターはタオル等のグッズに良く使用されることなどから、用途間に経済的な強い関連性(経済的牽連関係)があると認められました。また、原告商標自体が配信からわずか2カ月で約1,700 万人のダウンロード者を記録して、2013 年には当期売上額約475 億ウォンを達成するなど爆発的な人気を博し、「国民ゲームANIPANG」などと表現する報道もあったため、世の中に広く知られているとされました。そして、そのような広く認知されている商標を経済的関連性が高い用途に使用するとして出願した商標は、需要者をあざむき、だますおそれがある商標に該当するとして、登録無効の判断となりました(2016.7.15 判決言渡し)。
 人気モバイルゲームのゲーム以外の多様な事業分野への波及力が広く認められた点が特筆されます。
 
ゲーム規則は知財として保護を受けられるか?
 
 原告は、13 年4月頃「ファーム・ヒーロー・サガ(Farm Heroes Saga)」というゲームを開発し、フェイスブックのプラットフォームを通じて全世界にリリースしました。原告のゲームは、特定のブロックを3個以上一直線に並べるとブロックが消滅し、その数などに応じて得点を獲得できる、いわゆる「マッチ3ゲーム」の基本形式をとりつつ、ブロックの消滅時、隣接するブロックの点数がさらに高くなるようにする等の独自の規則を加えたパズルゲームです。被告は、原告のゲームと同一の方式を採択しているマッチ3ゲームである「フォレストマニア(Forest Mania)」というゲームを開発し、14 年2月頃から提供しています。
 
 本件では、まず被告の行為が著作権侵害に該当するかが問題になりましたが、被告が模倣したゲーム規則等については、著作権法で保護の対象となる「人間の思想又は感情を表した創作物」に該当せず、アイデアに過ぎないため、著作権法で保護される対象ではないと判断されました。
 
 次に、被告の行為が不正競争防止法第2条第1号ヌ目で規定する不正競争行為(他人の相当な投資又は労力により作成された成果等を(中略)無断で使用することにより、他人の経済的利益を侵害する行為)に該当するかどうかが検討されました。そして、本件原告ゲームは原告の相当な投資及び労力で作られた成果に該当すること、原告ゲームと被告ゲームとは基本的に「マッチ3ゲーム」形式をとりながら追加で同一の各種規則を適用した同種のゲームであることなどが認定され、被告の行為が不正競争行為と判断されました(15.10.30 判決言渡し)。
 
 著作物性のないゲーム規則は、知的財産権として保護を受けることがこれまでは難しいと見られていたところ、上記不正競争防止法の条項が15.1.28 に施行された結果、地方法院の判決ではありますが、本件のように保護を受けられるという判断が示されるようになってきています。
 スマホ上でSNSと連動して動作するモバイルゲームは、スマホ及びSNSが日常のコミュニケーションツールとして浸透している現在、模倣被害にも遭いやすくなっていると思われます。しかし、上述のように近年はかなり広範な保護が与えられるようになってきており、韓国政府・司法がただ乗りを許さない姿勢を強化していることがうかがえます。
 
<今月の解説者>
 日本貿易振興機構(ジェトロ)ソウル事務所 副所長 笹野 秀生 (特許庁出向者)
 1995 年特許庁入庁。1999 年に審査官昇任後、調整課品質監理室長等を経て、2014 年6 月より現職。

 
 
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