知財最前線は今 【The DailyNNA】
 
Fail no.100 韓国知財の歩みと国家知財戦略(日本貿易振興機構(ジェトロ)ソウル事務所 副所長 笹野秀生(特許庁出向者))  2017-04-05
 2017年(平成29 年1月11(水) The Daily NNA【韓国版】掲載



Fail no.100 韓国知財の歩みと国家知財戦略


 2008年10月から韓国の知的財産に関する様々な情報をお伝えしてきた本コラムも100回目を迎えました。連載開始以来のこの8年あまりの間における、韓国知財を巡る状況の変化を、国家知財戦略の観点から概観します。


2008年頃の状況

 韓国はかつて模倣大国と言われており、日本税関における仕出国別の模倣品差止件数でも2004年まではトップの比率でしたが、2005年に中国を下回ってからは急速に減少し、2009年には6.8%、2015年には1.7%まで減少しています。


[図]仕出国(地域)別輸入差止件数構成比の推移(財務省HPよりJETROソウル作成)
 

 模倣大国を脱する段階にあった2008年頃からは、韓国の知的財産(IP)を充実させるとともに、IP分野で世界をリードしようという論調が目立つようになってきました。2008年10月には、特許出願が特に多い日米欧中韓の5つの特許庁の長官が集う会合を韓国特許庁が済州島にてホストし、5大特許庁間の協力を通じて、「高品質の強い特許の創出」を誘導し、韓国の国際競争力強化に繋げていく契機とするとの報道発表がありました。また、2009年に発議された「知的財産基本法」が2011年に成立し、同年に大統領直属の「国家知識財産委員会」も設立され、国を挙げて知的財産を尊重・保護する体制が出来上がりました。

第1次国家知識財産基本計画とその成果
 2011年に設立された国家知識財産委員会で、国全体の知財総合戦略を定める5か年計画である第1次国家知識財産基本計画(2012-2016)が立てられました。この計画では、「知識財産強国」をビジョンとし、質の高いIPの創出と活用を通じたIPの国際的な収支改善、模倣品対策のさらなる強化、国民のIPに関する意識の向上等が掲げられました。
 
 この計画に基づいて、営業秘密保護の強化、特許裁判における証拠提出命令の強化、商標ブローカー行為の防止等に関する法律改正がなされ、IP保護強化・活用促進が図られており、国際的なIP保護国としての評価も上昇しています(IMDによる評価で2010年32位、2015年27位)。
 
 IP出願件数はここ数年増加傾向を維持しており、単純な件数では中国に遠く及ばないものの、人口当たりの件数では、特許、デザイン、商標の分野でいずれも世界1位となっています。特に、中小企業の出願の伸びが大きく、国全体でIPに関する意識が高まっていると考えられます。

 IPの質に関しても、2013年以降IP貿易収支の赤字額が徐々に減少し、未だ赤字ではあるものの輸入額と共に輸出額も増えていることから、質の良い「稼げる」IPが増えてきたということが窺えます(下図)。


[図]韓国知的財産権貿易収支(韓国銀行「2015年度知的財産権貿易収支(暫定)」2016.7.12より)
 

第2次国家知識財産基本計画
 2017年から始まる第2次基本計画が2016年12月23日に議決されました。この計画では、「第4次産業革命を先導するIP国家競争力確保」を目指し、5年間4兆7百億ウォンを投入して各種戦略を推進するとしています。
 
 この計画では、5年経って改善がなされたとはいえ、相変わらず高品質なIP創出が第1の課題となっていること、中小企業やグローバル市場における韓国企業のIP保護強化により焦点があてられていること、第4次産業革命に関するIP保護が新たな課題として浮かび上がってきていることが特徴的です。
 
 輸出立国である韓国にとって、差別化された高付加価値製品・サービスを世界市場に提供し続けることが重要な命題であり、そのためのIP政策が益々重要になっていくものと思います。動きの速い韓国の動向は、日本にとっても参考になることが多く、これからも韓国IP情報の有用な情報をタイムリーにお届けしたいと思っています。


<今月の解説者>
日本貿易振興機構(ジェトロ)ソウル事務所 副所長 笹野 秀生 (特許庁出向者)
1995年特許庁入庁。1999年に審査官昇任後、調整課品質監理室長等を経て、2014 年6 月より現職。

 
 
ニセモノ撲滅キャンペーン