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File no.93 韓国における二次電池素材の特許動向(日本貿易振興機構(ジェトロ)ソウル事務所 副所長 笹野秀生(特許庁出向者)) 2017-04-05
2016年(平成28 年6月8日(水) The Daily NNA【韓国版】掲載



File No.93 韓国における二次電池素材の特許動向

 
二次電池はモバイル機器等に使われる小型のものだけでなく、車両用や大型エネルギー貯蔵システム用等の中大型のものもあり、近年そうした中大型二次電池を中心に急激に市場が成長しています。韓国企業は代表的な二次電池であるリチウムイオン電池の分野で2011 年に日本企業を抜いて国別シェア1位となり、二次電池の性能を左右する素材についても開発及び特許出願も活発に行っています。本稿ではその二次電池素材の韓国における特許動向についてご紹介します。
 
二次電池の概要
 
 二次電池の製造は、韓国においてはサムスンSDIとLG化学を中心に行われています。二次電池にはいくつかのタイプがありますが、代表的なものであるリチウム(Li)イオン電池について、その概要を見ます。 Liイオン電池は充電時にLiイオンを正極から負極に提供し、放電時に負極に蓄えられたLiイオンが正極に移動して電気を発生します。正極と負極の間にはLiイオンを通過させるとともに、発生した電子が外部回路(負荷)を通じて動けるように内部短絡を防止するセパレーター、リチウムイオンが移動できるスペースと環境を提供する電解質が存在します。実際にはこのような積層構造の単位を幾重にも積み重ねて製品を構成しています。 
 
二次電池の各素材の概要と供給元
 
 正極はリチウムコバルト酸化物などのLi化合物を主な素材としており、電池素材の価格のうち約44%を占める核心素材です。低価格化や電気伝導度の改善などが主な課題であり、供給元はL&FやECOPRO等の韓国企業が主となっています。負極材には天然又は人造黒鉛が使用されています。負極材は国産化率が0.1%の分野ですが、最近GSカル
テックス、ポスコケムテック、愛敬油化など国内企業の進出が活発で、国産化の可能性が高くなっています。セパレーターは、二次電池の安全性を左右する素材であるため、高いレベルの技術が要求され、他の素材に比べ参入障壁が高い分野と言え、負極材に次いで国産化率が20%未満と低い分野です。要求される高いイオン透過度、低電気抵抗、電解質に対する化学的安定性、高密度の充填が可能な薄い膜厚等の条件を満たす材料としては、ポリエチレン(PE)等からなる高分子多孔膜が使用されています。電解質は、有機溶媒、電解質塩および添加剤で構成され、電極材料に合わせてその組成が最適化されています。最近では、電池からの液漏れを防止するために、ポリマー可塑剤を用いたジェルタイプの電解質も使用されています。電解質の国内企業シェアは90%程度と高くなっています。

 

二次電池素材の特許出願動向
 
 二次電池の素材に関する韓国特許出願動向を調べたところ、00~09 年まで100~300 件以内で出願されていましたが、10 年以降増加の一途を辿っています。これは韓国政府が10 年に20 年までの「二次電池の競争力強化に向けたロードマップ」を策定し、国際競争力向上の施策を展開した動きとも軌を一にしています。素材別の出願動向を見ると、正極、電解質、負極、セパレーターの順に出願が多くなっています。 



 
 出願人国籍別では、韓国出願人が全体の約65%、日本出願人が約29%と日韓で93%を占めており、続いて米国(約3.0%)、ドイツ(約1.2%)、中国(約0.5%)の順となっています。

 企業別出願数を韓国企業/外国企業別に5位まで示すと上表のようになります。全体的に二次電池製造メーカーのLG化学・サムスンSDIの出願が圧倒的に多く、次いで日本のメーカーが上位に来ることがわかります。部品・素材生産に参加している中小企業数は約50 社ありますが、それらの中小企業はほとんど特許出願上位に入っておらず、財閥系企業以外では、韓国企業の10 位に中堅企業である電解質素材供給メーカーのソルブレイン(45 件)がランクインするに留まっております。韓国の素材供給メーカーがあまり特許を出願しておらず、韓国の二次電池素材の特許競争が主として二次電池製造メーカー2社と日本企業との間で行われていることが伺えます。
 
 なお、この記事で引用したデータ等は弊所が15 年度に実施した調査に基づいています。該調査の報告書は弊所HP(
http://www.jetro-ipr.or.kr/ )から参照できます。
 
<今月の解説者>
 日本貿易振興機構(ジェトロ)ソウル事務所 副所長 笹野秀生(特許庁出向者)
 1995 年特許庁入庁。99 年に審査官昇任後、情報システム室、審判部審判官、調整課品質監理室長等を経て、
 2014 年6月より現職。
 
 
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