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File No.81 「色」の独占使用は認められるか?-色彩の商標登録出願に関する高裁判決より-
(日本貿易振興機構(ジェトロ)ソウル事務所副所長 笹野 秀生 (特許庁出向者))

2015-08-04
2015 年(平成27 年6月10日(水) The Daily NNA【韓国版】掲載



File No.81 「色」の独占使用は認められるか?-色彩の商標登録出願に関する高裁判決より-

 企業等がシンボルカラーを定めて各種グッズや出版物に使用することはよく行われていますが、自社製品に使用している特定の「色(色彩)」自体を商標として登録し、排他的・独占的に使用することは出来るでしょうか?この問題に関して、最近韓国特許法院で注目すべき判決がなされましたので紹介します。
 
【非伝統的商標に関する制度】 
 商標(TradeMark)は、製品やサービスのブランドを他と区別するために用いられており、特許庁に登録することで独占的・排他的に使用する権利が付与されます。伝統的・典型的な商標は文字や図形からなりますが、消費や広報活動の多様化により、それ以外の様々な形態の商標が登録可能となるよう、各国で制度が整備されています。韓国においては次表に示すように非伝統的商標に関する制度(韓国商標法、以下単に「法」という)が施行されています。ちなみに、日本では2015 年4 月1 日から色彩、動き、ホログラム、音、位置に関する商標出願の受付を開始しています。

【事件(事件番号:2014 ホ5206)の概要】
 外国出願人Aは、「ピンク色の単一色のみ」からなる商標を、人工関節等の人工材料からなるインプラントを指定商品として、2012 年1月18 日に韓国を指定しつつ国際商標出願を行いましたが、韓国特許庁は2013 年4月3日付で拒絶決定を行いました。拒絶の理由は、出願商標は簡単でありふれた商標(法6条1項6号)に該当し、需要者が特定者の商品を表示するものと識別できない商標(法6条1項7号)にも該当し、さらに使用による識別力(法6条2項)も取得できていないというものです。
 出願人Aはこれを不服とし、拒絶決定に対する不服審判請求を行いましたが、これについても同年5月23 日に特許審判院で棄却する審決がなされたので、出願人A(以下「原告」という)は韓国特許法院(高等裁判所)に審決取消訴訟を提起しました。
 
【原告の主張】
 原告は訴訟において次の点を主張しています。
 ・出願商標は取引業界であまり見られない独特のピンク色を用いているところ、これは指定商品の股関節ボールなどで一般的  に用いられる白色や灰色などとも区分され、自他商品識別力がある。
 ・原告製品は、他国において幾多の賞を受賞して優秀な製品と認められている他、市場投入以来2012 年7月末までに、世界で200 万個以上の股関節ボールなどの製品が人工関節手術に使用されたことなどから、使用による識別力も取得している。
 
【特許法院の判断】
 (1)商標(色)自体に識別力があるか(法6条1項)法院は、出願商標はピンク色の単一の色彩で構成されているものであって、特に注意を引くものではなく、その色は良く使用されるものであるため、特定人に独占排他的に使用させることは不当であるとしました。
 (2)使用による識別力があるか(法6条2項)法院は、原告が提出した事実は、自社の紹介や自社製品の優秀性に関する内容が大部分で、出願商標の「使用期間、使用回数及び使用の継続性、その商標が付された商品の生産販売量及び市場占有率、広告宣伝の方法、回数、内容、期間及びその金額など」を客観的に確認することができる内容が不十分であり、出願商標が需要者間に特定人の商品を表示するものと認識されていたと認めるに足りないことなどから、使用による識別力を取得したと見ることもできないとしました。この判決は、2014 年11 月21 日に言渡され、その後大法院(最高裁判所)で棄却されて確定しています。
 
【非伝統的商標に対する識別力の認定について】
 一般に、非伝統的商標に対しては商標自体の識別力は認められにくい傾向にあります。単一の色彩のみからなる商標の登録は、制度施行以来認められたケースはありませんが、今回の事件でも、商標自体の属性による識別力は無いと明確に判示しています。また、今回と同じ出願人の立体商標の事件でも、立体そのものには識別力が無く、組み合わされたロゴの存在により識別力が認められています。したがって、登録がなされるかどうかは、使用により識別力を取得しているか否かにかかってきますが、単一の色彩の場合は、非伝統的商標の中でも特に単純であり、独占排他的な権利を与えた場合の影響も大きいため、使用による識別力に関する判断もとりわけ厳格に行っているものと見られます。特に、単一色彩商標の登録を目指す場合は、本判決を参考に、韓国国内における実績を含めた使用実績を十分に証拠として揃えることが必要といえるでしょう。
 
<今月の解説者>
 日本貿易振興機構(ジェトロ)ソウル事務所副所長 笹野 秀生 (特許庁出向者)95 年特許庁入庁。99 年に審査官昇任後、情報システム室、審判部審判官、(財)工業所有権協力センター研究員、調整課品質監理室長を経て、2014 年6 月より現職。
 
 
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