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File No.79 製造方法が異なる物は特許侵害品となるか?-プロダクト・バイ・プロセス・クレームの解釈-( 法務法人世宗(SHIN&KIM)パートナー弁護士・弁理士 金潤希) 2015-04-15
2015 年(平成27 年)4月8日(木) The Daily NNA【韓国版】掲載



File No.79 製造方法が異なる物は特許侵害品となるか?-プロダクト・バイ・プロセス・クレームの解釈-

 プロダクト・バイ・プロセス・クレーム(以下「PBPクレーム」という)とは製造方法を記載した物の発明のクレーム(請求項)であって、特許要件の判断と特許侵害の判断において請求項に記載されている製造方法を考慮すべきかについて議論がありました。この問題について、韓国大法院で注目すべき判決がありましたので、紹介します。
 特許発明とは特許を受けた発明を言います。そして、特許発明は「物の発明」、「方法の発明」、「物を生産する方法の発明」と分けられます。PBPクレームは「プロダクト」が示すようにあくまでも「物の発明」ですが、「製造方法」が請求項に記載されている特許発明です。生命工学分野や高分子、混合物、金属などの化学分野などにおける物の発明の中には、ある製造方法によって得られた物を構造や性質などから直接的に特定することが不可能又は困難な場合があります。最初はそのような場合に対応するためにPBPクレームが用いられましたが、この頃はその限りではありません。
 韓国大法院が2015 年2月12 日に宣告した2013 フ1726判決(本件判決)において問題になった請求項には「方法Aによって製造したBを有効成分とし、これに薬剤学的に許容される物質が添加された胃腸疾患治療剤用の薬学的助成物」と記載されています(理解の便宜上、簡略にしました)。これはあくまでも「薬学的助成物」という「物」の発明ですが、その物の構成要素であるBの「製造方法A」が請求項に記載されているため、PBPクレームに該当します。
 ところで、特許侵害を判断するためには、まず侵害されていると主張する特許発明の権利範囲を確定する必要があります。そこで、PBPクレームの権利範囲を確定するにあたり、クレームに記載されている「製造方法」それ自体を発明の技術的構成と限定して解釈すると、侵害物(権利範囲確認事件なら、確認対象発明)の構造や性質が特許発明と同様であっても、もし異なる製造方法が用いられたら特許侵害は成立しません。しかし、「製造方法」を含む請求項のすべての記載により特定される構造や性質などを有する物を権利範囲と解釈する見解によりますと、結果物である物が同じならば、異なる製造方法が用いられていたとしても特許侵害が成立します。
 この点について、本件判決は2015 年1月22 日に宣告した2011 フ927 判決を引用し、同判決にて判示した「製造方法が記載された物の発明の特許要件を判断するに当たり、その技術的構成を製造方法自体に限定して把握すべきではなく、製造方法の記載を含む特許請求範囲の全ての記載によって特定される構造や性質などを有する物として把握する」というやり方を、特許要件の判断(特許可否の判断)時だけでなく、「特許侵害訴訟や権利範囲確認審判などの特許侵害段階において、その特許発明の権利範囲に属するのかを判断するにも同様に適用すべきである」としました。
 本件判決において、製造方法Aがその方法による最終生産物であるBの構造や性質に影響するものではなかったため、本件判決は問題の特許発明の権利範囲を単に「Bを有効成分とする薬学的助成物」と解釈しました(但し、本件判決は確認対象発明の有効成分が特許発明のBとは異なると判断しました)。一方、本件判決の原審(特許法院2012ホ11139 判決)は「製造方法Aによって得られるBを有効成分とする薬学的助成物」と限定して解釈していました。
 但し、本件判決は「このような解釈方法によって導出される特許発明の権利範囲が明細書の全体的な記載によって把握される発明の実体に照らし、広すぎるなどの明白に不合理な事情がある場合は、その権利範囲を特許請求範囲に記載された製造方法の範囲内に限定することができる」と付け加え、違う基準が適用されうることを示唆しました。従って、PBPクレームの権利範囲を解釈するにあたり、製造方法を含むクレームの記載全てにより特定される物が何なのかを把握した上、それを明細書の記載から把握される特許発明の実体と対照する必要があります。本件判決は、有効成分Bの優れた効果に関する実験結果が特許発明の明細書に記載されている点などからして、上記のように解釈しても不合理な事情はないと判断しました。
 日本の知財高裁は2014 年1月に、「物の特定を直接的にその構造又は特性によることが出願時において不可能又は困難であるとの事情が存在するため、製造方法によりこれを行っているとき」においては「当該発明の技術的範囲を製造方法に限定されることなく、同方法により製造されるものと同一の物」と解釈し、そうでない場合は「製造方法により製造される物」と限定的に解釈する判決を出しています。韓国においてもそのような考え方に基づく判決がありましたが、今回の韓国大法院判決はそのような区別なしに、PBPクレームの解釈を行うと判示して判例変更を行っており、今後の知財実務に影響を与える重要な判決と言
えます。

 <今月の解説者>
 法務法人世宗(SHIN&KIM)パートナー弁護士・弁理士 金潤希 高麗大学電子工学課卒業、同大学大学院法学修士課程修了、ソウル地方弁護士会 国際委員会 委員、専門は特許・営業秘密・著作権等のIP と個人情報・サイバークライム等のIT
 (監修:日本貿易振興機構=ジェトロ=ソウル事務所副所長 笹野秀生)
 
 
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