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原告 アステラス製薬(特許権者) vs 被告 コアファームバイオ(実施者) 2016ナ1929
2017-06-30 上告待機
【事実関係】
原告は、延長登録の元になった本件特許(国際出願日/優先権主張日/登録日/登録番号:1995年12月27日/1994年12月28日/2003年4月23日/第386487号)に対して医薬品輸入品目許可を受けるのに1年6月16日が要されたという理由でこの期間に対して存続期間延長登録出願をし、延長登録決定を受けて第1項~第8項の発明の存続期間満了日は2015年12月27日から2017年7月13日に延長された。

延長登録出願書の記載内容
[特許法第89条の許可等を受けた日付] 2007年3月30日
[許可内容(登録内容)]医薬品輸入品目許可第16号
[有効成分の化合物名] (1S)-(3R)-1-azabicylo[2.2.2]oct-3-y; 3,4-dihydro-1-phenyl-2(1H)-isoquinoline carboxylate
[一般名(品目名)]コハク酸ソリフェナシン(solifenacin suucinate)
[商品名(商標名)]ベシケア錠(VESI care tablet)
[能力または効果(用途)]過敏性膀胱症状の治療(Treatment of hypersensitive urinary bladder disorders)

被告は、2016年7月25日に食品医薬品安全処長から専門医薬品「Aケア錠4.98mg及び9.96mg(ソリフェナシンフマル酸塩)」について医薬品製造・販売品目許可を受けて販売を実施した。これに対して原告は、被告の上記製品の製造・販売行為が本件特許権を侵害するという理由でソウル中央地方法院に侵害差止及び損害賠償請求の訴えを提起したが敗れ、これに対して控訴した。

【判決内容】
ベシケア錠と被告製品の同一性
存続期間が延長された特許権の効力は、製造・輸入品目許可事項によって特定された医薬品だけでなく、実質的に同一の品目として取り扱われて1つの製造・輸入品目許可を受けることができるように規定された医薬品または既に医薬品製造・輸入品目許可を受けた医薬品と実質的に同一の、別途に医薬品製造・輸入品目許可を受ける必要がない医薬品などにも及ぶと見るべきである。
これについて詳察すると、被告製品と「ベシケア錠」が、生物学的同等性試験の結果が同じものと確認され過敏性膀胱症状の治療という同一の医薬効果を発揮するとしても、被告製品と「ベシケア錠」の成分など品目上の差は単なる僅かな差でもなく、全体的にみて形式的な差に過ぎないものでもないため、両者が実質的に同一の医薬品であるとは言い難い。もし、原告側が本件特許の存続期間内に既に輸入品目許可を受けた「ソリフェナシンコハク酸塩」でなく「ソリフェナシンフマル酸塩」を実施しようとしたのであれば、原告側もこれに対する別途の輸入品目許可を受けなければならなかったことが明白な点などを総合してみれば、被告製品が「ソリフェナシンコハク酸塩」を主成分とする「ベシケア錠」と実質的に同一の「許可対象物」に該当するとは言い難く、他にこれを認める証拠がない。
被告製品がベシケア錠と均等であるという原告の主張に対する判断
本件でのようにその侵害対象物が延長登録の理由になった「許可対象物」と実質的に同一であると言えない場合においてまで、両者の課題の解決原理が同一であり、実質的に同一の作用効果を奏し、そのように置換することが通常の技術者が容易に考え出すことができる程度に自明である等の理由だけで存続期間が延長された特許発明の効力範囲に属するとするならば、これはその延長登録された特許権の効力範囲を制限している旧特許法第95条規定の趣旨に反し、その効力範囲が過度に広くなる不合理な結論に至る。
従って、原告の主張はいずれも受け入れられない。

【専門家からのアドバイス】
医薬品発明は、その販売において品目許可を受けなければならず、このための臨床試験などに時間がかかるという点を考慮し、この該当期間に対して存続期間の延長を許容する。一方、その効力範囲が過度に広くならないように許可の対象物(特定用途が定められている場合には、その用途に用いられる物)に関する特許発明の実施行為に延長された特許権の効力を制限している。
本判決は「許可の対象物」を判断するにおいて、コハク酸塩からフマル酸塩に塩が変更された場合は同一性が認められないという基準を提示したものと考えられる。その根拠として、特許権者が実施しようとする場合にも、別途の品目許可申請が必要であるということを挙げているのである。現行法の条文と実務上、一応妥当な面があると思われる。
ただし、特許権者としては、期間、費用などを考慮すると、1つの塩を選択して製品化するのが一般的であり、「存続期間延長」の趣旨は、申請された効果/効能に対しては許可を受けるために実施できなかった期間だけ該当製品の排他的独占力の認定を受けようとするものであるが、同一の効果/効能の製品であるにもかかわらず、塩が変わったために延長された特許権の効力が及ばないとすれば(本件明細書で「フマル酸塩」は「コハク酸塩」の代替可能な塩基として記載されている)、結局、明細書に記載された他の塩に変更する場合、いくらでも延長された特許権を回避して同一の効果/効能で医薬品を製造・販売できることになるので、制度が形骸化するおそれがある。従って、上記判決基準に対しては再検討が必要であると思われる。

 
 
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