著作権  大法院
原告 上告人 A vs 被告、被上告人 株式会社B、 C、株式会社D 2017ダ209624
2017-05-26 確定

【事実関係】
原告は、小説「コリアンメモリーズ」を著述して2003年10月23日に出版した。その後、上記小説に基づいてシナリオも著述した(以下、上記小説は「原告小説」、シナリオは「原告シナリオ」とし、あわせて「原告著作物」という)。一方、映画「暗殺」(以下「被告ら映画」という)は、被告Cが2012年10月頃にシナリオ構想を始め、被告株式会社Bが制作し、被告Cが演出し、被告株式会社Dが配給した映画で、2015年7月22日に国内で封切り上映された。原告著作物と被告ら映画は、いずれも抗日武装独立運動を素材にしたものである。原告は原告小説のあとがきに「この作品は映画として制作するために執筆した。しかし、映画化されると、どうしてもシナリオ作業で作品の内容が多少変わってしまうため、原本として残しておくべく、小説としてまず出版するものである。最後にこの作品を執筆する機会をいただき、励まし支えてくださった○○輸出公社○○○社長…に心より感謝申し上げる。どうかこの作品がよい映画に作られるよう祈りながら…」と記載し、原告小説に基づいてシナリオも執筆した。また、訴外Eは、そのころ自身のホームページに原告の小説及びシナリオを掲載した。原告は被告らに著作権侵害による損害賠償を求める訴訟を提起した。

【判決内容】
大法院は2017年5月26日、本件について審理棄却したことから、大法院の判決文には理由が記載されなかった。原審法院の判断は次のとおりである(ソウル高等法院2017.1.12.言渡2016ナ2025353判決)。

1.接近可能性
イ.関連法理
著作権法が保護する複製権や二次的著作物作成権の侵害が成立するためには、対比対象となる著作物が侵害されたと主張する既存の著作物に依拠して作成されたという点が認められなければならない。このような依拠関係は、既存の著作物に対する接近可能性、対象著作物と既存の著作物間の類似性が認められれば推定することができ、特に対象著作物と既存の著作物が独立に作成されて同じ結果に至った可能性を排除することができる程度の顕著な類似性が認められる場合には、そのような事情だけでも依拠関係を推定することができる。また、二つの著作物間に依拠関係が認められるかどうかと実質的類似性があるかどうかは互いに別個の判断として、前者の判断には後者の判断とは異なり著作権法によって保護される表現だけでなく、著作権法によって保護されない表現などが類似しているかについても、ともに参酌され得る(大法院2014.5.16.言渡2012ダ55068判決等)。  
ロ.判断
原告著作物と被告ら映画は、抗日武装独立運動を素材にした小説や映画などフィクションで典型的・普遍的・必須的に用いられるエピソードや抽象的人物類型または設定などが一部類似する事情は認められる。しかし、上記のような各事情だけで被告ら映画を制作する前や制作する過程で原告著作物に依拠したとは断定し難い。

2.実質的類似性
イ.関連法理
著作権の保護対象は人間の思想又は感情を言葉や文字などによって具体的に外部に表現した創作的な表現形式に過ぎず、表現されている内容、即ち、アイデアや理論などの思想及び感情そのものは、仮にそれが独創性や新規性があるとしても、原則的に著作権の保護対象にはならない。したがって、著作権の侵害如何を判断するために2つの著作物間に実質的な類似性があるかを判断するときにも、創作的な表現形式に該当するもののみをもって対比すべきであり、小説やシナリオなどに登場する抽象的な人物の類型あるいはある主題を扱うにおいて典型的に伴う事件や背景などはアイデアの領域に属するもので、著作権法によって保護を受けることができない(大法院2000.10.24.言渡99ダ10813判決等)。
ロ.判断 
被告らの著作財産権のうち複製権、二次的著作物作成権、著作人格権のうち同一性維持権、氏名表示権侵害は、原告著作物と被告ら映画間に実質的類似性があることを前提としている。しかし、原告著作物と被告ら映画はアイデアに属する領域で一部類似する点があるだけで、著作権法の保護対象である創作的表現形式で類似するとは見難いので、両者間に実質的類似性を認めることができない。したがって、これを前提とした原告の著作権侵害の主張はいずれも理由がない。
具体的に、原告著作物と被告ら映画とを対比してみる。2つの作品には独立闘士、女性スナイパーが登場するという点は同じであるが、小説や映画に登場する人物が女性で独立運動家であるとか訓練されたスナイパーであるといった設定は抽象的な人物の類型としてアイデアの領域に属する。また、当時、爆弾を投げるなど武装抗日運動に参加した女性独立運動家が多数おり、第2次世界大戦当時、戦場で女性スナイパーがいた事実などが認められるところ、これに照らしてみると、この時期の独立運動を素材にしている原告著作物に登場する人物類型は原告著作物のみの独特の特徴であるとも見がたい。さらに、原告著作物の女性主人公と被告ら映画の女性主人公の具体的表現は全く類似しない。実在した独立運動家である「金九氏」が暗殺要員を朝鮮に送るという設定もアイデアの領域に属する。当時、日本や親日派の暗殺を目的として組織された団体がいくつかあり、そのうち金九氏を中心に組織された団体は実際に狙撃など暗殺作戦を実行したという事実に照らしてみれば、上記設定も歴史的事実を多少変容させたもので、原告著作物のみの独特の特徴であるとはいえない。さらに、原告著作物と被告ら映画において、上記設定の具体化された表現は全く類似しない。その他、金九氏と共同で活動する登場人物がいるという点、密偵除去作戦が出てくるという点、飛行機を献納した親日派が処断されるという点などの設定もいずれもアイデアの領域に属する。  原告は、原告著作物と被告ら映画との間に部分的・文字的類似性は認められなくても、包括的・非文言的類似性は認められると主張する。語文著作物のうち小説、劇本、シナリオなどのような劇的著作物は登場人物と作品の展開過程の結合によって、登場人物が一定の背景下で作り出す具体的な事件の連続でなされる。このような事件が類似してもアイデア部分であるといえる主題などを扱うにおいて典型的に伴う事件、背景、必須場面であれば、包括的・非文言的類似性が認められるのは難しい。本件で一部設定は類似すると見ることができるが、このような設定は原告著作物に特異な事件ではなく歴史的事実に基づいた主題を扱うにおいて典型的に伴う事件や背景、抽象的な人物の類型などで、創作的な表現形式であるとは見難い。従って、アイデアを超えて創作的表現に該当する部分が類似するという点が明らかにならない以上、上記のような設定が類似するからといって原告著作物と被告ら映画間に包括的・非文言的類似性が認められるとは見難い。最後に、原告は被告らが原告のアイデアを無断で使用したので、民法上不法行為にあたることを主張しているが、原告が提出した各証拠だけでは、被告らが原告のアイデアを無断で使用したことを認めるのに不十分であり、仮に被告らの上記のような使用事実が認められても、人物の類型や歴史的事実に基づいたアイデアの領域に属する部分を利用したものであれば、これをもって違法であると断定するのは難しい。
 
【専門家からのアドバイス】
ドラマや映画が商業的に成功すると、後日これら作品の原作であることを主張する作者などによって著作権争いが起きるケースがしばしば見られる。歴史的背景を同じくする著作物間には劇的展開や表現上の共通点が少なくなく、このような権利主張に対する防御が非常に難しい場合もある。こうした紛争を未然に防ぐためには、プロジェクトの企画段階からこのような問題が起こり得ることをあらかじめ想定し、後日、独立した創作であることを立証できる資料、例えば、作家ノート、企画・取材日誌などをきちんと整理して保存しておくことが役立つであろう。

 
 
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