著作権  ソウル高等法院
原告、控訴人A vs. 被告、被控訴人B 2016ナ2020914
2016-12-01 大法院係属中

【概  要】

原告が本件バレエ作品を企画して制作過程及び公演に至るまで全体的な調整と指揮・監督をした事実は認めることができるが、原告が本件バレエ作品中の舞踊部分を創作したとは見難く、舞踊部分を除いた音楽や舞台美術部分等が原告によって創作されたものとも見られず、原告が本件バレエ作品に創作的に寄与したところがあると見難い。  また、被告が原告の提示したアイデアによって本件バレエ作品の振付を担当し、原告が被告の担当した振付に関する意見を提示した事実は認められるが、原告が本件バレエ作品中の舞踊部分の著作者または共同著作者であると見ることはできない。

 

【事実関係】

原告は大学で舞踊を専攻して公演企画社を運営し、20088月頃からバレエ等の各種公演を企画・公演している。被告はバレエ舞踊家兼振付師として活動し、自身のバレエ教室を運営している。

 原告は20118月頃、国楽(韓国の伝統民族音楽)演奏とバレエが共演するバレエ作品(「本件第1バレエ作品」)を制作することにし、20122月頃、被告を訪ねて本件第1バレエ作品の振付及び舞踊家指導を依頼し、これに対して被告は20123月頃から本件第1バレエ作品の振付を担当し、舞踊家を指導する等、本件第1バレエ作品の公演準備をした。その後、原告は201254日に本件第1バレエ作品を初めて公演し、その公演パンフレットに原告を芸術監督として、被告を振付師として表示した。一方、原告は20124月頃、本件第1バレエ作品制作過程で被告に社会的弱者のためのバレエ作品(以下「本件第2バレエ作品」といい、本件第1バレエ作品と合わせて「本件バレエ作品」とする)も制作することを提案し、被告がこれを受け入れて本件第2バレエ作品の振付を担当する等、本件第2バレエ作品の公演準備をした。原告は2012628日に本件第2バレエ作品を初めて公演し、その公演パンフレットに原告を代表・団長として、被告を芸術監督及び振付師として表示した。

 被告は本件バレエ作品の初演時から2014年頃まで本件バレエ作品の公演に参加したが、その後、原告は2015年頃、被告の同意なく韓国文化芸術委員会に本件第2バレエ作品に関する公演申請をし、その公演申請が受け入れられるや、水原市等で本件第2バレエ作品を公演した。これに対し、被告は201558日に、本件第2バレエ作品の振付を担当した被告の許諾なく本件第2バレエ作品を公演することは、本件第2バレエ作品に関する被告の著作財産権等を侵害するという趣旨を原告に通知した後、201562日に韓国著作権委員会に本件バレエ作品に対して著作権登録を申請して著作権登録を終えた。

 原告は、本件第1バレエ作品は、本件バレエ作品全体を総括して企画・演出する芸術総監督である原告が被告に各幕別に振付意図及び表現形式を伝え、これに従って被告が振付師兼舞踊家指導者の地位で音楽に合う振付の草案を考え、舞踊家とともに原告の前で実演した後、原告がそのうち変更する部分と排除する部分を指摘し、被告が原告の意図に従って再構成して原告がこれを確定する方式で創作がなされ、本件第2バレエ作品の舞踊部分は、本件第1バレエ作品の舞踊部分を修正して使用したものなので、原告は本件バレエ作品の著作者であるか、少なくとも共同著作者であり、被告は被告名義の本件バレエ作品に関する著作権登録を抹消する義務があることを主張した。原告はまた、仮に本件バレエ作品中、舞踊部分の著作者が原告ではなく被告であるとしても、本件バレエ作品は被告が原告の被雇用人として業務上創作したものであり、その著作権は原告に帰属するという点も主張した。

 一審法院は、原告が本件バレエ作品の創作的な表現形式に寄与したといえないので、本件バレエ作品に関する原告の著作者または共同著作者の地位を認めることができないとし、また原告と被告の間に雇用関係があったことを前提とした原告の業務上の著作物の主張を排斥し、原告の請求を棄却した(ソウル中央地方法院2016318日付言渡2015ガ合553551判決)。これに対し、原告が控訴した。

 

【判決内容】

二審法院の判断は次の通りである(ソウル高等法院2016121日付言渡20162020914判決)

 

1)原告の著作者または共同著作者の主張について

著作権法第2条第21号は「二人以上が共同して創作した著作物であって、各人の寄与した部分を分離して利用することができないもの」を共同著作物の定義として規定しており、著作物の創作に複数の者が関与したとしても、各者の創作活動の成果を分離して利用できる場合には、共同著作物ではなく結合著作物に過ぎないというべきである。また、バレエは舞踊著作物として一般に舞踊家の躍動的な動きと舞踊に使用された音楽、衣装、照明、舞台装置等が結合している総合芸術のジャンルに属し、複数の著作者によって外観上一つの著作物が作成されたものではあるが、その創作に関与した複数の著作者各自の寄与した部分が分離されて使用されることもできるという点で共同著作物ではなく結合著作物ということが妥当なので、バレエを構成する著作物の各著作者は各自の分担部分に対して個別の著作者として取り扱われる。また、バレエ自体は演劇著作物の一種として映像著作物とはその性格を根本的に異にするため、映像物制作者に関する著作権法上の特例規定がバレエ制作者に適用される余地がないので、バレエ制作の全体を企画して責任を担う制作者でも、それがバレエの完成に創作的に寄与したところがない以上、独自の著作権者であるということができない。また、バレエの演出者は該当バレエに関与した実演者としてその実演自体に対する複製権及び放送権等、著作隣接権を有するだけである。本件について見ると、原告が本件バレエ作品の制作を企画して制作過程及び公演に至るまで全体的な調整と指揮・監督をした事実は認めることができる。しかし、原告が本件バレエ作品中、舞踊部分を創作したといい難く、舞踊部分を除いた音楽や舞台美術部分等が原告によって創作されたものともいえず、原告が本件バレエ作品に創作的に寄与したところがあると言い難い。従って、原告が演出者として本件バレエ作品の実演自体に対する複製権及び放送権等、著作隣接権を保有するのを超えて本件バレエ作品に関する著作権まで保有するとは言い難い。

 一方、著作権法の著作者は著作物を創作した者を指すもので、単に創作のヒントやテーマを提供したに過ぎない者が著作者であるといえず、著作物の作成に二人以上の者が関与した場合であるとしても、その中で一人のみが創作的な要素に関する作業を担当し、他者は補助的な作業を行うに過ぎなかったり、アイデアや素材を提供するにとどまったときは、創作的作業を担当した者のみがその著作物の著作者となり、他者は著作者とならない。バレエのような舞踊著作物において振付とは、振付師が一連の実体的動作と身振りを創造的に組合わせ、配列した「動作の型」といえ、被告が原告の提示したアイデアによって本件バレエ作品の振付を担当し、原告が被告の担当した振付に関する意見を提示した事実は認められるが、原告が本件バレエ作品中、舞踊部分の著作者または共同著作者であると認めるには不十分で、他にこれを認めるだけの証拠がない。

 

2)本件バレエ作品が原告の業務上の著作物に該当するかどうか

著作権法第9条は、法人等の名義で公表される業務上の著作物の著作者は、契約又は勤務規則等に別段の定めがないときは、その法人等となると規定しており、著作権法第9条で規定した業務上の著作物に該当するためには、著作物が法人等の業務に従事する者によって作成されたこと、即ち、法人等と実際の著作者間に雇用関係ないし少なくとも実質的な指揮・監督関係が認められなければならない。本件について見ると、原告が作成した給与台帳に一定期間、被告に対する月給が記載されている事実、原告が被告の四大保険料[1]を代わりに納付した事実、被告が原告の運営する公演企画社の芸術監督兼振付師の肩書が記載された名刺を持ち歩いていたことがある事実は認められる。しかし、原告が作成した上記給与台帳は、その後、本件作品の公演と関連した会計処理・税金申告等の目的で作成されたと見る余地があり、原告は自身の公演企画社を運営しながら社員を雇用して日常的な業務を行ったと見られず、原告が公演を手配し、その公演日程が決まれば、被告が舞踊家とスタッフを構成して公演をした後、原・被告間でその費用と収益等に関する精算がなされる形で公演業務を遂行したと見られるが、原告は本件バレエ作品に関する公演を推進する過程で被告にその振付を依頼したに過ぎず、それ以外に原告が公演を計画したり推進中であった他のバレエ作品に関する振付作業や公演練習をすることを被告に指示したことはないと見られる。  また、原告は被告に、本件バレエ作品に関する振付をし、公演練習のできる場所を特に提供せず、被告は原告が主張する雇用期間中にも自身のバレエ教室を運営し続けたと見られるが、これは通常の雇用関係に照らしてみると非常に異例であり、原・被告間に雇用関係が存在したことが分かる勤労契約書等が作成されたこともない。従って、原・被告間の雇用関係は認め難い。

 

【専門家からのアドバイス】

本件で原告は、自身が直接著作者の地位を有すると主張したが、法院は、原告はバレエ作品の制作を企画した者として芸術監督等の役割で実演者の地位を認めることはできても、著作物自体に対する個別の創作的寄与を認めることができないので、バレエ作品に含まれた個別の著作物に関する著作者または共同著作者といえないと判断した。しかしながら、バレエ作品の芸術監督という職責を担ってバレエ作品に対する全体的な調整と指揮・監督等を行った者に該当著作物に対する実質的な創作的寄与がなかったと結論を下した部分に対しては、論旨によっては多少疑問を呈する余地があるだろう。著作者かどうかは対外的に表示された肩書や基本役割等によって形式的に決定されるものでなく、著作物の作成に実質的に創作的寄与をしたかを厳正に判断すべきであり、本件で全体的な判決の方向性には影響を及ぼさないかもしれないものの、創作的寄与に関する原告の疎明が十分になされたかという点に対しては疑問がある。一方、本判例中のある所ではバレエ作品を演劇著作物とし、他の所では舞踊著作物としたことに明示的な説明はないが、バレエ作品の二重的な性格を前提としているようでもある。本件は芸術作品の公演事業では、よく発生し得る類型の事件であるが、当事者らが紛争に巻き込まれる前に著作権譲渡等を通じて権利関係を明確に整理しておけば、このようなことにはならなかったであろう。



[1] 社会保険制度として国民年金、国民健康保険、雇用保険、産業災害補償保険(労災保険)の4つを総称する語。

 
 
 
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