商標  特許法院
原告、個人 vs. 被告、個人 2016ホ2362
2016-10-21 確定

 
【概  要】
「北村」は、それ自体で「北の方の村」という観念を有しており、昔から「北の方にある村」または「ソウルの北側の村」と呼ばれて使用されてきており、全国的に北側に位置した村の名称として「北村」が多数使用されている等、抽象的な方位的位置を示す「北の方にある村」という認識も依然として共存しているので、本件登録サービスマークの登録決定時または本件審決時にソウルの有名観光地という地理的感覚を即時に伝達する標章であるとか、または顕著に知られている慣用的な地名であるということができない。
また、指定サービス業である「飲食店業」等との関係で普通名称、慣用標章、産地、性質標章等に該当もしないので、公益上特定人に独占させることが適当でないサービスマークであるともいえず、「北村」が含まれた商標またはサービスマークが多数登録されており、実際の取引でサービスの標識として使用されている点等の事情を総合すれば、需要者が何人かの業務に係るサービス業を表示するものかを識別することができないサービスマークに該当するともいえない。
 
【事実関係】
原告は「北村」という標章(以下「本件標章」)をサービス業区分第43類の飲食店業等を指定サービス業として登録を受けた被告を相手取って、本件標章はその登録如何の決定時または本件審決時に「顕著な地理的名称のみからなる商標」に該当し、「何人かの業務に係る商品を表示するものかを識別することができない商標」に該当するので、その登録が無効となるべきであるとし、無効審判を請求したが、審判院は本件商標がある程度地理的名称として知られているとは認めることができるものの、顕著に知られているということは難しく、また、飲食店業と関連して識別力を喪失したということも難しいとし、原告の審判請求を棄却する審決をした。これに対し、審決が取り消されるべきであるとし、原告が特許法院に審決取消訴訟を提起した。
 
【判決内容】
(1) 本件標章が顕著な地理的名称に該当するかどうか[1]
顕著な地理的名称とは、単に地理的、地域的名称をいうものであり、その用語自体が一般需要者に即時に地理的感覚を伝達できる標章をいい、必ずしも法令で定められた行政区域の名称またはその略語のみからなる商標ではないとしても、顕著に知られている慣用的な地名またはその略語のみからなる商標も顕著な地理的名称またはその略語のみからなる商標に該当して登録され得ない。
 このような法理に基づいて、北村の歴史、北村に関するメディア報道、北村の観念、国語辞典の記載事項、アンケート調査の結果等に基づいて本件標章が顕著な地理的名称に該当するかどうかを詳察すると、少なくとも本件審決時には景福宮と昌徳宮、栗谷路と三青公園に取り囲まれたソウル鍾路区司諌洞、昭格洞、安國洞、嘉會洞、苑西洞、三清洞、桂洞、孝悌洞一帯の地域に伝統韓式家屋と文化財、ギャラリー、カフェ等が密集しているソウルの有名観光地として知られているという点は認められるが、「北村」は、それ自体で「北の方の村」という観念を有しており、昔から「北の方にある村」または「ソウルの北側の村」と呼ばれて使用されてきており、全国的に北側に位置した村の名称として「北村」が多数使用されている等、抽象的な方位的位置を示す「北の方にある村」という認識も依然として共存しているので、本件登録サービスマークの登録決定時または本件審決時に、上記一帯の地域に所在するソウルの有名観光地という地理的感覚を即時に伝達する標章であるとか、または顕著に知られている慣用的な地名であるということは難しいといえる。
 
(2) 本件標章が何人かの業務に係る商品を表示するものかを識別することができない商標に該当するかどうか
商標法第71条第1項第7号[2]は、商標法第6条第1号~第6号に該当しない商標でも、自己の商品と他人の商品の出所を識別することができない、即ち、特別顕著性がない商標は登録を受けることができないという意味であるが、ある商標が特別顕著性を有する商標かどうかは、その商標が有している観念、指定商品との関係及び取引社会の実情等に鑑みて客観的に決定すべきである。
 先に詳察した通り、本件標章はソウルの有名観光地を直感させると断定できず、その指定サービス業である「飲食店業」等との関係で普通名称、慣用標章、産地、性質標章等に該当もしないので、公益上特定人に独占させることが適当でないサービスマークであるともいえない。また、本件審決時を基準に北村が含まれた多数のサービスマークが登録されて共存している事実、被告が訴外「(株)北村チング」に本件標章に関する使用権を付与し、(株)北村チングがこれに基づいて「北村ソンマンドゥ」という商号で加盟店を募集して2016年には138店に至っている事実等を総合的に考慮してみると、本件標章は他のサービス業と区分されるサービスマークとして使用されていることが分かる。
 
【専門家からのアドバイス】
商標法が顕著な地理的名称のみからなる商標を商標登録の消極的要件として規定した趣旨は、その顕著性と周知性のため特別顕著性を認めることができず、誰にでも自由な使用を許容し、ある特定人に独占使用権を付与しないことにある。本件では、「北村」がソウルの有名観光地としてある程度知られているという点は認めながらも、本件標章が有する観念自体が「北の方の村」であり、全国的に北側に位置する村の名称としてよく使用されている抽象的な方位的位置を示す認識が共存するという事実を考慮し、特定人に独占使用権を付与することが不当であるとは言い切れないという判断の下に、ソウルの有名観光地という地理的感覚を即時に伝達する、顕著な地理的名称に該当しないとした。特に、被告が本件標章に関する使用権を(株)北村チングに付与し、(株)北村チングが本件標章を使用して営んでいる営業規模が相当なもので、(株)北村チングは、本件標章を他のサービス業と区分される形態で使用しているという点が積極的に考慮された点にも注目すべきであろう。
 



[1]商標法第6条第1項第4号
顕著な地理的名称・その略語又は地図のみからなる商標
商標法第71条第1項第5号
商標登録がされた後に、その登録商標が第6条第1項各号の一に該当するに至った場合(第6条第2項に該当するに至った場合を除く)
[2]商標法第6条第1項第7号
第1号乃至第6号のほか、需要者が何人かの業務に係る商品を表示するものであるかを識別することができない商標


 
 
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