商標  大法院
原告承継参加人 株式会社ヒューマンパス vs. 被告 株式会社クラウンジン 2014ダ59712
2016-09-30 確定

【概  要】
不法行為に基づいた損害賠償請求において、その損害額は請求人がこれを立証することが原則であるが、無体財産権である商標権侵害の場合には、相当な因果関係にある損害額の立証が極めて困難な場合が多いため、商標法は商標権者の損害額に関する証明を軽減するために損害額の推定に関する規定をおいている。即ち、侵害した者がその侵害行為によって利益を受けた場合、その利益額、登録商標の使用に対して通常受けることができる金額の相当額、弁論全体の趣旨と証拠調べの結果に基づいて法院が認める相当の損害額を損害額とすることができるようにしており、商標権者などが使用している登録商標を同一性範囲内で使用した場合には、5千万ウォン以下の相当の金額を損害額とすることができるように規定している。ただし、商標権者が登録商標を使用していない場合にまでこのような損害額推定規定を適用できるかどうかが争点になった事件である。
 
【事実関係】
遺伝子検査業などを指定サービス業としてサービスマークの登録を受けた原告は、登録サービスマークと類似の標章を用いて遺伝子検査業を運営する被告に対し、サービスマーク権の侵害差止及び損害賠償を求めた事件において、原告承継参加人(以下「参加人」)は登録サービスマークを原告から譲り受けた後、権利承継参加した。1審法院は、参加人のサービスマーク権の侵害差止請求のみ受け入れて損害賠償主張は全て排斥した。参加人は1審法院の判決を不服とし、旧商標法(2014年6月11日法律第12751号で改正される前のもの、以下「商標法」という)第67条の2に基づいた法定損害賠償請求を予備的主張として追加した。2審法院は、被告が原告側の登録サービスマークと類似の標章を使用する間に原告又は参加人が登録サービスマークを使用しなかったので、原告又は参加人に損害が発生したと見られないとし、原告の商標法第67条第3項による損害賠償請求を排斥し、予備的に主張した商標法第67条の2第1項による損害賠償請求も共に排斥した。これに対し、参加人が上告した。
 
【判決内容】
(1)商標権者が登録商標を使用していない場合、商標法第67条第3項[1]によって通常使用料相当額を損害額として認められるかどうか
 
この規定は、損害に関する被害者の主張・証明責任を軽減しようとするものなので、商標権者は権利侵害の事実と通常受けることができる使用料を主張・証明すればよく、損害の発生事実を具体的に主張・証明する必要はない。しかし、上記規定が商標権の侵害事実だけで損害の発生に対する法律上の推定をしたり損害の発生がないことが明確な場合まで損害賠償義務を認めようという趣旨ではないので、侵害者は、商標権者に損害の発生があり得ないという点を主張・証明して損害賠償責任を免れることができると見なければならない。一方、商標権は特許権などとは異なって、登録されている商標を他人が使用したということだけで当然通常受けることができる商標権使用料相当額が損害と認められるのではなく、商標権者がその商標を営業などに実際に使用していたにもかかわらず、商標権侵害行為があったという等、具体的な被害発生が前提とならなければ認められない。従って、商標権者が当該商標を登録のみしておいて実際に使用することはなかった等、損害発生を否定することができる事情を侵害者が証明した場合には、損害賠償責任を認めることができない。
 参加人は原告からサービスマーク権の移転を受けたが、原告や参加人自らそのサービスマークを使用して遺伝子検査の営業をしたと認めることができないので、原告あるいは参加人に損害が発生したと見ることができないので、商標法第67条第3項による損害賠償責任請求を排斥する。
 
(2)商標権者が登録商標を使用していない場合、商標法第67条の2[2]によって法定損害賠償請求権が認められるかどうか
 
偽造商標の使用などによる商標権侵害行為があった場合に、損害金額の証明が困難であっても一定の限度の法定金額の賠償を受けることができるようにすることにより、被害者が容易に権利救済を受けられるようにする例外的規定なので、その適用要件は法文に規定された通り厳格に解釈しなければならない。従って、商標権者がこの規定による損害賠償を請求しようとする場合、商標権侵害当時の当該登録商標を商標権者が実際に使用していなければならず、侵害者が使用した商標が商標権者の登録商標と同一又は同一性がなければならない。同一性要件を備えられない場合には、通常の方法で損害を証明して賠償を請求しなければならず、上記規定で定めた法定損害賠償を請求できないものであり、このような法理はサービスマークの場合にも同一に適用される。
 被告が遺伝子検査の営業をする間に原告又は参加人がその登録サービスマークを使用したと認めることができず、さらに被告が使用した標章は、本件サービスマークと類似はするが同一性が認められると見ることもできないので、商標法第67条の2第1項による損害賠償責任請求を排斥する。
 
【専門家からのアドバイス】
損害賠償額推定規定は、立証が難しい知識財産権の侵害事件において、商標権者の損害額に関する立証責任を軽減するために導入された規定であり、損害の発生に対する法律上の推定をしたり損害の発生がないことが明確な場合まで損害賠償義務を認めようという趣旨ではないので、商標権者が登録商標を使用していない場合にまで損害額が推定されるわけではなく、これはこれまで確立した大法院の見解であった。また、韓・米FTA交渉を通じて導入された法定損害賠償制度を規定している商標法第67条の2第1項の場合には、明文として登録商標を使用していることを要件としているという点で、商標権者が登録商標を使用していない場合には適用され得ないことが明らかであり、この大法院判決は不使用商標に基づいた法定損害賠償請求権が認められないことを明示的に確認した最初の判決であるという点で意義がある。


[1]第66条の2(損害賠償の請求)
商標権者又は専用使用権者は、自己の商標権又は専用使用権を故意又は過失により侵害した者に対してその侵害によって自己が受けた損害の賠償を請求することができる。
第67条(損害額の推定等)
③第66条の2による損害賠償を請求する場合、その登録商標の使用に対して通常受けることができる金額に相当する額を、商標権者又は専用使用権者が受けた損害の額としてその損害賠償を請求することができる。
[2]第67条の2(法定損害賠償の請求)
①商標権者又は専用使用権者は、自己が使用している登録商標と同一又は同一性がある商標をその指定商品と同一又は同一性がある商品に使用して、自己の商標権又は専用使用権を故意又は過失により侵害した者に対して第66条の2による損害賠償を請求する代わりに、5千万ウォン以下の範囲で相当な金額を損害額として賠償を請求することができる。この場合において、法院は、弁論全体の趣旨と証拠調べの結果を考慮して相当な損害額を認定することができる。


 
 
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