商標  大法院
原告(個人) vs. 被告(ディスカバリーコミュニケーションズ,LLC.) 2016ホ663
2016-08-18 確定

 
【概  要】
大韓民国商標法は、商標権者が故意に登録商標の類似範囲に属する商標(以下「実使用商標」)を使用することにより、他人の業務に関連する商品と混同を生じさせるに至った場合、登録商標を取消しにすることができると規定している。商標権者が登録商標を正当に使用する義務があることを明示した規定として、登録商標の登録後に当該実使用商標を使用した場合のみ該当し、登録商標の登録前にだけ使用していた場合には取消事由に該当しないが、特許法院及び大法院は、実使用商標を当該登録商標の登録以前から使用しはじめ、登録後も引き続き使用したため、商品出所に関する混同のおそれをより高めているので、商標法第73条第1項第2号が規定する商標の不正使用に該当するとして取消しを認めた。
 
【事実関係】
被告は全世界的に有名なメディア関連企業で、2012年からは韓国国内で「」、「」、「」等の商標(以下「本件対象商標」)を表示したアウトドア製品の販売も行っていたところ、「」商標(以下「本件登録商標」)を商品類区分第25類に属する商品を指定して登録を受けた原告が、「」、「」、「」等の商標(以下「本件実使用商標」)を衣類製品に使用していることを発見し、本件登録商標に対して商標法第73条第1項第2号(注:現行法第119条第1項第1号[1];以下同じ)に該当することを理由に取消審判を請求した。これに対し特許審判院は、本件実使用商標は本件登録商標と類似の商標に該当し、本件対象商標は需要者間に広く知られている商標に該当して、原告が本件実使用商標を使用することにより一般需要者が本件対象商標との間で出所の混同を起こしている点、および原告に故意があった点を認め、本件登録商標は商標法第73条第1項第2号に該当し取消しになるべきであるとした。これに対し原告は、本件登録商標が登録される以前から本件実使用商標を使用してきた点、本件実使用商標を別個の商標として出願した点、本件登録商標と本件対象商標は互いに類似しない点、および本件実使用商標の使用開始時点では本件対象商標は広く知られていなかった点などを根拠に商標法第73条第1項第2号に該当しないと主張して審決取消訴訟を提起したものの、特許法院は原告の主張をいずれも排斥して棄却する判決を下し、これに原告が上告した事件である。
 
【判決内容】
(1) 本件登録商標の登録前から本件実使用商標を使用していたという事情により商標法第73条第1項第2号の適用を排除することができるか
本件実使用商標が本件登録商標の登録後に登録商標を変形したものでなく、本件登録商標の登録前から継続使用してきた商標であるとしても、本件実使用商標の標章が本件登録商標の標章と類似し、本件実使用商標を継続使用することが本件登録商標をそのまま使用する場合より本件対象商標との関係において商品出所に関する混同のおそれをより高めるのであれば、商標法第73条第1項第2号が規定する商標の不正使用に該当するとみなければならない。
 
(2) 原告が本件実使用商標を別個の商標として出願したという事情により商標法第73条第1項第2号の適用を排除することができるか
原告の本件実使用商標に関する商標登録出願が事実審弁論終結時点までに商標登録にまで至らなかった点、これらの商標登録出願がすべて被告が本件登録商標に対して取消審判を請求した後に行われたものとみられる点などを考慮すれば、原告の上記のような出願は商標法第73条第1項第2号の適用を回避しようとする試みであるとみる余地が十分にあるので、単に本件実使用商標について別個の商標登録出願をしたという事情だけで商標法第73条第1項第2号の適用が排除されるとみることはできない。
 
(3) 本件登録商標が本件対象商標と類似しない場合、商標法第73条第1項第2号の適用を排除することができるか
登録商標が対象商標と類似しないとしても、登録商標と類似の実使用商標を使用することによって対象商標との関係において需要者の誤認・混同を招く場合も十分にあり得るのであるから、商標法第73条第1項第2号を適用するにおいて本件登録商標と本件対象商標との間の類似性が前提とならなければならないものではない。
 
(4) 本件実使用商標の使用を開始した時点では本件対象商標は広く知られていなかったため原告に不正使用に関する故意がなかったとみることができるか
商標不正使用に関する故意とは、登録商標の登録が完了した後、登録商標と類似の商標を使用する時点を基準に判断すればよく、また、原告は本件登録商標の登録後に本件対象商標の存在を知りながらもそれと類似の本件実使用商標を継続して使用したのであるから、原告に不正使用の故意がなかったとみることはできない。
 
(5) 結論
原告の主張はいずれも理由がないため、本件登録商標が商標法第73条第1項第2号に該当するという判断は妥当である。
 
【専門家からのアドバイス】
旧商標法第73条第1項第2号は、商標権者が商標制度の本来の目的に反して自らの登録商標をその使用権の範囲を超えて不正に使用することができないように規制すること(多くの場合、商標公報に掲載されたロゴデザインとほぼ等しい態様で、登録された指定商品の範囲内で使用することを意味する)により、商品取引の安全を図り、他人の商標の信用や名声に便乗する行為を防ぐためのものとして、需要者の利益はもちろん、他の商標を使用する人の営業上の信用と権益も併せて保護しようとすることにその趣旨がある。実際のビジネス展開においては、商標登録をする前に複数の類似商標を試作したり、サンプル出荷などで配布・市販したり、又は、登録後にも一定期間単位で商標やロゴデザインをリデザインして必ずしも、公報掲載当時のロゴデザインと一致しないケースも多いものであるが、このような上記条項の文言および趣旨に照らしてみれば、複数の類似商標を使用しているがそのうち一部のみを出願して登録を受けた商標権者が、のこりの未登録商標を継続して使用した場合に、それにより他人の商標との関係において登録商標のみを使用した場合に比べて需要者が商品出所を誤認・混同するおそれがより高まったとすれば同条項に該当し登録商標が取り消しになり得ることを明示的に示唆しており、商標やロゴデザインの開発・改良・管理には専門家の意見を取り入れておく必要がある。
 


[1] 商標法第119条(商標登録の取消事由)
① 登録商標が次の各号のいずれかに該当する場合には、その商標登録の取消審判を請求することができる。
1.商標権者が故意に指定商品に登録商標に類似する商標を使用し、又は指定商品に類似する商品に登録商標もしくはこれに類似する商標を使用することにより需要者に商品の品質を誤認させ又は他人の業務に関連する商品と混同を生じさせた場合
 
 
ニセモノ撲滅キャンペーン